茂木大輔『拍手のルール 秘伝クラシック鑑賞術』[reading memo]

「拍手の仕方」という視点でクラシック音楽の鑑賞方法を説いた名著だ。これによってコンサート会場での不要な気遣いを払拭して、より音楽の世界に浸ることができるだろう。ということは、ほかのジャンルの音楽ライヴにも応用できるということだ。

全編、茂木節が炸裂する本書ではあるが、この「拍手適性運用機会規制法」という表現、いいなぁ(笑)。

そうそう、ずっと拍手するのは疲れるんですよね〜。

楽章の間の拍手問題はクラシック音楽の「しきたり」なのかと思っていたが、やはり新規参入を目論むと、当然そのへんを知らない層が会場になだれ込んでくるため、秩序が保てなくなるわけだ。

このあたりの「定番」を知っていると、なんとなく「ツウ」っぽく見えるからいいかもしれない(笑)。

茂木さんは、演奏者としては楽章間の拍手は決して不愉快ではないと語っている。実際に、彼が出演した山下洋輔さんがバンマスのコンサートでは、あらかじめ山下さんが「拍手したい時に拍手していいですよ」と断りをいれて、場の緊張感を和らげていたりしたのを覚えている。

ただ、それは「ジャズ寄りのコンサート」という割り引いた意味があるわけで、厳粛な空気感を求めるクラシック・コンサート原理主義者には受け入れられないかもしれないが…。

モーツァルトは観客の拍手を自己評価のバロメーターにしていたという点が興味深い。たしかに、それ以前の音楽は、神のものだったり、一部の王侯貴族のためだったりしたから、楽師に敬意を示す必要はなかったはずだ。

交響曲というスタイルが定まる前は、楽章ごとにウケたかウケなかったかの拍手があったというのもおもしろいエピソードだ。

このほかにも、「ブラボー屋」の話などがおもしろかった。最近ジャズのコンサートでも、あきらかにフライング気味で声をあげながら拍手をする輩、いやお客様がいらっしゃるようで、せっかくの余韻を楽しめないことがあったりするのだけれど、クラシック・コンサートの高いチケット代を支払ってこれがあるとホントに腹立つだろうなぁ…。

あと、余談だが、これをボクは楽天Rabooの電子書籍で買ってしまって、本当に後悔している。やっぱり読み返したい本があると、電子書籍リーダーの選択はいい加減ではいけないなぁと思ってしまう。

やっぱり紙で買い直そうかと思ったのだけれど、確かこの本は電子書籍化の際に大幅に加筆されていたはず。そうなるとやっぱり、Kindleなのか…。

Kindleの評判がいいので、だいぶ気になっている。困った…。