『かしむのなしは』は仙台がいかにジャズの揺り籠として貴重な都市だったかを記録に残した労作[読書memo]

2022年秋、ネットで流れてくる情報のなかに、仙台のジャズの歴史を綴った本が上梓されるというものがあった。

おもしろそうなのでポチろうと思ったが、ネットでは直接の購入ができないタイプのものだったので、仕方なく版元に問い合わせたら、仙台市内の書店での販売のみということがわかってきた(版元から直接は買えなかった)。

税込3,000円の本を仙台まで買いに行くのもオツだし、なにより定禅寺ジャズ・フェスティバルが開催されるタイミングだったから、一石二鳥の旅にできるかもしれないと画策したが、諸事情で断念。

そこで、その本が置いてあるという書店に凸電して、郵送か宅配はできないものかと尋ねてみると、支店間なら配送できるので、そちらの支店に注文してくれれば購入は可能だという答えが返ってきた。

ということで、最寄りの支店を探すと、横浜そごうにある紀伊國屋書店横浜店が見つかったので、出向いて注文&取り寄せ、一週間ほどで引き取りに再訪して入手、ということで読むことができるようになったのがこの本だ。

3,000円はちょっと高いかなと思ったが、ハードカバーで400頁超、写真も多いので、かなり努力されたことが伝わる造りになっていることが、手に取ってみてわかった。

「かしむ」は「むかし=昔」、「なしは」は「はなし=話」と、いわゆるバンドマンことばと呼ばれた倒置法を用いたもの。つまり、「昔の話」というタイトル。

杜の都・仙台に根ざしたジャズ文化のルーツを解き明かすとともに、終戦後の世界情勢を語るうえでも貴重な証言が盛り込まれた、文化人類学の資料と言っても過言ではない。

神保町の喇嘛舎という古書店で「angle」を見つけた話

 

これは2016年12月22日のお話。

近々に必要な資料を探しに、神保町へ出掛けました。

 

神保町で資料を探すなんて、何十年ぶりだろう(笑)。

 

でも、ネットでは探せない情報が、まだあの魔窟には眠っていたのですよ。

 

こういう捜し物をするときには、「腹が減っては」できないものなのですね。

だから、まず腹ごしらえ。

ということで、「丸香」の行列に並びました。

 

自分的には珍しく、この店ではメニューの浮気をしません。

定番のかけ温ととり天。

 

おっと、ミスショット(笑)。

 

ごちそうさまでした。

さて、資料探しをしましょうね。

 

ということで出向いたのが、「本と街の案内所」。

ボクが神保町を初めて訪れたのは中学生のとき。

都電が廃止された直後ぐらいだったでしょうか、その路線が都バスに変わっていたかな。

いちばん最初に行ったときは、「神田の古本屋街」だから神田駅で降りればいいと思っていたけど、ぜんぜん違うところをウロウロしてしまいました。気がついたら日本橋の三越だったことを覚えています(笑)。

その後は位置も確定し、住んでいた四谷からバスで乗り換えなしで行けたりしたこともあって、わりと頻繁に本屋で本を探しに行っていました。

10年ほど前、仕事先が九段下だったこともあって、半年ぐらいのあいだは身近な存在でしたが(丸香もそのときに行くようになったのです)、横浜に越してからはなかなか行きにくい場所になっちゃいましたね。

 

ということで、久しぶりの神保町で、勝手もわからなくなっていたので、「本と街の案内所」に寄ってみることにしたのでした。ここ、設置されたのは知っていたのですが、まず利用することはないだろうと思っていた場所。

で、おそるおそるドアを開けて、なかのオネエサンに聞いてみたところ……。

実に親切に調べてくれました。

探していたのは、「シティーロード」という40年ほど前に出ていたイベント情報誌。

こういうのって、扱っている古書店がかぎられているんですよね〜。なので、いくつか絞ってもらおうと相談していると、2軒ほどピックアップしてもらいました。

まず、「本と街の案内所」に近い1軒を訪ねると、「ありませんね」という返事。

そこで、藁をも掴むような思いで向かったのが、もう1軒。

 

とてもわかりづらいところにある「喇嘛舎」という店でした。

「らましゃ」と読みます。

「丸香」のすぐ近くじゃん(笑)。

 

ビルの2階にあるアヤシげな店(笑)。でも、看板はデカいですね。

 

ここのオヤジさんに、「シティーロード」の別冊を探していることを相談してみました。というのも、ランダムに積み上げられた古雑誌の山から目的のブツを探し当てるのは無理だと判断したから。

まぁ、気むずかしいオヤジで、相手にされないことも覚悟していたのですが、「なに? どんなことを調べたいの?」と好意的でラッキー(笑)。

現実的には、ボクが探そうとしていた「シティーロード」の別冊はなく、代わりに「angle」ならそういう情報が載っているんじゃないかな、というアドバイス。

確かに、「シティーロード」は「ぴあ」と並んでボクの高校時代の貴重な情報源だったのですが、そのすぐあとに出てきた「angle」も街歩きのガイドに便利だと、購入していた記憶が蘇ってきました。

そこで、その「angle」はあるのかと聞いてみると、「確か、あったはず……」と山を崩すことしばし。

ありました!

 

見れば、これも買った覚えがあるものの、もちろん引越を繰り返すうちに処分してしまったものでした。

中身をパラパラ見ると、これは十分に役立ってくれそう。

恐ろしく高かったら悩むけど、3,000円とのことで、即決。

いや〜、神保町はその名のとおり“神”ですなぁ(笑)。

 

ということで、目的を達成したうえに早めに横浜まで戻ってこられたので、桜木町で下車して、「はなみち」へ寄り道。

 

ハマチの刺身と濃い〜ウーロン割り。

祝杯を独りであげました。

めでたしめでたし。

 

 

“娯楽”と“アート”の違いに関する橋口亮輔さんの指摘についてのメモ

 

映画監督の橋口亮輔氏へのロングインタビュー(「熱風」2017年1月号掲載)に興味深い発言があったので、共有したいと思います。

このインタビューで橋口氏は、宮台真司氏が橋口氏の監督作品「恋人たち」を評論したなかで、映画を観て「スカッとしたと感じるのは娯楽、観る前と後で自分が変わったと感じるのはアート」という趣旨の記述をしていることを引き合いに出していました。この指摘がとても興味深いですね。

これは「音楽」と言い換えても当てはまるのではないでしょうか。

また、作家性についてこのように表現しています。

(ヒットを出すと言うことは)儲かるか、儲からないか、カネを生むか、生まないかという判断基準のほうが、作品の質よの話より上になるだろうというのを如実に感じます。

そういうなかで長い間成功されている方は、自分のつくりたいもの、志向するものと、お客さんのニーズとが合っている幸福な作家ですよ。

作家性ばかりがとんがってしまうと、ついてこられないですからね。だからとんがって「俺はすごいことをやっている、描いているんだぞ」といくら言ってみたところで、観客がついてこられなければ、それはただの裸の王様になるわけですから。

やっぱりいつも作家が目指すのは、このとんがっているところというかな、いわゆる作家性と、ミドルグラウンドを観客と一緒に探して自分の作家性を貶めなくてもいける地点なんです。

 

エンタテインメントとアートの問題は、ジャズでも避けて通ることが出来ない問題点です。

この指摘は、ボクがこれまでモヤモヤしていた気持ちを、かなりすっきりさせてくれたものと言えます。

 

小沼ようすけ出演のドキュメンタリー「Music from Guadeloupe」がおもしろかった件

 

塩谷哲さんと小沼ようすけさんのライヴを観に行ったら、MCで小沼さんが「テレビがあるんです」というので、ちゃんと録画しておいて観ました。

 

 

グアダループの話は、インタヴューのときに本人から聞いていたのですが、こうして実際に映像を見ると、ぜんぜん伝わり方が違いますね。当然だけど。

小沼さんがグオッカというリズムに見せられた理由がなんとなくわかったような気がします。

 

ちょうどそんなときに、隙間時間で読んでいるのがこれ。

 

 

ルイ・アームストロングが出てくるミステリー小説なんですが、20世紀初頭のニューオリンズが妙にリアルに描かれていて、とてもハマっちゃっています。長いのでなかなか読了できないんでけど……。

 

「スポーツの4つの柱」はジャズにも応用できそうですね #勝つための脳と心の科学 #辻秀一

 

辻秀一『勝つための脳と心の科学』を読みました。

 

 

著者は内科医から、パッチ・アダムスに触発されてスポーツ・ドクターになった人。

 

おもしろいと思ったのは、「スポーツの4つの柱」という部分。

日本ではスポーツを文化としてとらえていないということを嘆いた著者が、なぜスポーツが文化であるかを解説する部分で触れられています。

スポーツには、「医療性」「芸術性」「コミュニケーション性」「教育性」という4つの要素があるので、文化たり得るとの論。

医療性とは、やる人も観る人も元気にさせること。

芸術性とは、感動があること。

コミュニケーション性とは、仲間と通じ合えること。

教育性とは、成長できること。

 

これらの要素は、音楽にも当然、当てはまります。

つまり、ジャズに接するということは、それで文化を生み出すことができるということになる。

なかなか端的にまとめられて、なにかがつながった感じがしました。

 

 

ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全曲集CDボックスを買ったらKGBの陰謀らしきことがあった件

 

このところショスタコーヴィチを集中的に聴いている。

Amazonのデジタル音源で交響曲全集があったのでダウンロード。

 

弦楽四重奏曲にも手を出して、まずエマーソン弦楽四重奏団の3番8番11番を収録したCDを購入。

続いて、ボロディン四重奏団の2番3番7番8番12番収録の2枚組CDと、エマーソン弦楽四重奏団の全曲5枚組CDも買ってしまった。

 

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一緒に購入したのは、東洋書店のブックレット「ショスタコーヴィチ」。ショスタコーヴィチの生涯を簡単に把握しながら、編年体で作品解説を読むことができるので、ガイドとして活用できる。

 

で、仕事の合間に少しずつ弦楽四重奏曲を聴き始めていたら、ボックスセットのほうに異変があるのを発見。

 

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デッカの輸入盤。3,600円だったのでポチッと買ってしまった(笑)。

 

 

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簡易的なボックスセットなので、なかはとってもシンプル。

 

 

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これが問題のブックレット。ずいぶん安っぽいなぁとパラパラめくっていたら……。

 

 

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表紙裏、つまり2ページ目と3ページ目(のはず)。

読んでみようと思ったのは、1枚目の収録曲のデータを調べようと思ったから。ところが……。

 

 

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あれ? 1枚目のデータがないよ?

ノンブルを見てみると3ページのはずが「5」になってる?

 

 

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げげげっ、2ページ分まるまる抜けてる!

丁合が崩れているわけでもなく、まったく3ページと4ページのデータが抜けちゃってブックレットにしちゃっているみたい。

 

うーん。

 

これはKGBの陰謀だろうかと思ってしまった(笑)。

 

KGBとはソ連国家保安委員会のこと。ショスタコーヴィチは国家上層部といろいろ軋轢があったようだ。でも、こんなかたちで妨害工作がなされているとは……。

 

ロシア連邦保安庁(FSB)はいまだにいろいろとうごめいているようなので、まったく冗談にならないかもしれないところが恐ろしいんだけど。。。

 

 

 

 

 

菅原正二『ジャズ喫茶「ベイシー」の選択』を読み終えて懐かしい気分に浸ってしまった

 

単行本刊行が1993年、文庫本になったのも2001年という古い本だ。

 

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たまたまネットで見つけて、購入することができた。いままで中古本が高値で手が出なかったのだけれど、とても安いものが出ていたのだ。ラッキー!

 

著者は……

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