久保憂希也『経理以外の人のための日本一やさしくて使える会計の本』[reading memo]

 

経済の仕組みのなかで生活をしている以上、お金の出入りに関する知識は必須だ。

経済の勉強は面倒だと思っていた。ボクは商売屋に生まれたが、親はほとんど経済について教えてくれなかった。別に世界の金融について学ぼうというのではない。

商売の手伝いをすると、お駄賃をもらうことができた。鶏卵の10kg入りの箱を仕入れ、それを店先の棚に並べるために、ヒビが入っていないかを確かめながら移して行く。これをやると、50円もらえたと記憶している。いわゆる労働対価としてのお駄賃だ。

お小遣いとは違うので、いわゆる経済活動に入るものだろう。

しかし、10kgの鶏卵を右から左に移す行動が、どのような基準で50円という価格になるのかは理解できなかった。おそらく50円は、それを握ってお菓子屋にいくと、アイスとチョコレートが買えたというほうの「対価」としての意味が大きかったのだろう。

もちろん、その理論によっても世界が動いていることを知ることは重要だが、意味のない取引の中では学ぶための意欲は湧いてこない。

本書は、こんな数字音痴の自分でも興味をもって経済の原則に近づくことのできる、生活の基盤を築くためのテキストだ。

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サラリーマンの経済行為は、見えない部分で必要経費を引かれ、将来価値などを加味した塩梅によって、実際には国が決めた年齢による標準給与になるべく合わせたかたちで支給される。

しかし、実際に企業は規定の報酬をやり取りして経済活動を行なうわけではないし、最低売上基準が決められているわけでもない。大儲けすることもできれば、損失を回収できないことだってある。

だから、経営という行為に関係するすべての人は、利益に対する正しい知識を有している必要がある。

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利益について正確な認識が確立したら、重要指数についての知識を得たい。利益の質を分析できるようになることが、経済活動の中で生き残るためには重要だからである。

ボクは、実家の商売を継がなければならなくなった26歳のとき、会計の知識はゼロに等しかった。父親が生きているときに帳簿の手伝いくらいはしたことがあったけれど、バランス・シートがどのような仕組みなのか、決算で黒字になるのと赤字になるのではなにがどう違うのか、ぜんぜん知らなかった。それもで、どんぶり勘定の小売業は、日銭が手元に残っていれば、それで商売が成り立っているという認識だったから、それ以上なにかを学ぶ必要は感じていなかった。

しばらくして小売業に見切りをつけたのも、総売上から母親と自分と配偶者の賃金を差し引いたら赤字になる、すなわち手残りがないことにようやく気づいたからだ。いくらちゃんと帳簿をつけても、収支が逆転していたら商売は続けられない。

フリーランスの編集やライターの仕事を始めると、会計のバランスがガラリと変わった。でもまた、どんぶり勘定で、入ってきただけ使ってしまっていた。

45歳を過ぎてから、1−1=0という会計概念ではこの先は暮らしていけないことがようやくわかった(遅いなぁ…)。

そして、ファイナンシャルプランニング技能士3級の資格を取るなど、そこからの脱却をはかることにしたのだ。

会計を知れば、1−1=0が0でなくなることも可能なのだ。知らないときはそれが「ありえない」と思っていたのだけれど、世の中には控除や還付など、さまざまな0ではなくしてくれる仕組みが存在し、それは会計の知識がなければ見過ごしてしまうものだった。いままでどのくらい知らずに損をしていたのだろう。そう考えると悔しいが、知ればそれを取り戻すチャンスが訪れる。

そのチャンスを与えてくれるきっかけが、この本にはあるわけだ。