[Book Review]デイヴィッド・ミーアマン・スコット ブライアン・ハリガン『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』

 

 

 

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本書は…

マーケティング・ソフトウェア会社のCEOであるブライアン・ハリガンと、ストラテジストでありプロの講演者というデイヴィッド・ミーアマン・スコットの共著。

世界中に熱狂的なファンをもつ伝説のロック・バンド、グレートフル・デッドが、ライヴ会場での録音はオーケー、ネットで(それ以前はテープや海賊盤)無料聴き放題という方針を貫きながら、年商5,000万ドルを稼いでいる仕組みについて解説しています。

グレイトフル・デッドについてはこのように紹介。

グレイトフル・デッドは、その初期からジャズ、カントリー、ブルーグラス、サイケデリック、ロックが融合したリフと即興の長いジャムセッションで知られていた。ジャンルが融合した結果、規定のカテゴリーには当てはまらなくなったので、バンドのファンたちは「ジャム・バンド」という新しいカテゴリーを作り、フィッシュのようなバンドがグレイトフル・デッドの後に続いた。(p120)

彼らがやろうとしてきたことは、ヒッピー・ムーヴメントに即したものだったわけですが、結果的にはフリーミアムの成功例として、経営学の歴史に刻まれる功績を残しました。

あまり価値がないものを無料で提供しても、マーケティング戦略として効果はない。例えば、読者が本を購入してくれることを期待して著者が「目次」だけ無料で提供しても、これにはほとんど価値がない。同様に、アプリケーションの無料版の機能があまりにも制限されている場合には、ソフトウェアは売れない。(p214)

フリーミアムをどうマネタイズするかについて、グレイトフル・デッドは高音質の正規アルバム制作という方法を選びました。

いわゆる、無償サンプルから有償へヴァージョンアップするというスタイルですね。

このほかにもブランディングなど、グレイトフル・デッドの手法の多くは、その後で経営改革のノウハウ本などでもっともらしく語られてきた類いのことであったことに気付くはず。

架空の例えではないところに、本書のおもしろさと、説得力の違いが出ていたようです。

ただ、グレイトフル・デッドに興味がない、あるいはわかないという人には、頭のなかに入りづらい例えかもしれません。

って言うか、そうなるとこの本の成り立ち自体を否定しなければならなくなるので、困ってしまうのですが…。

ただ、グレイトフル・デッドやロックに興味がなくても、優れた起業啓発書としての価値は損なわれないのでしょう。