ビジネス系のカンファレンスで松永貴志さんがおもしろいことを言っていた動画に見入ってしまった

 

ネットに「ジャズと経営」というテーマで行なわれたパネルディスカッションの動画がアップされていたので見てみることにした。

 

まあ、あまりこういう奇をてらったテーマのディスカッションは内容がなかったり噛み合わなかったりしてつまらないものというのが相場のようだけど、この動画はしばしばテレビでも取り上げられている業界の風雲児、ライフネット生命の代表取締役・岩瀬大輔氏と、もうひとりがピアニストの松永貴志氏だったから、ちょっと期待してみはじめたら、かなりおもしろかったのでメモを取りながら見入ってしまった。

 

【動画】ライフネット・岩瀬氏×ピアニスト・松永氏 「ジャズから学ぶマネジメント」 (あすか会議2014)|GLOBIS.JP

 

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このディスカッションは……

 

2014年7月に行なわれた「あすか会議」のなかのカンファレンスのひとつ。

 

「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、人的ネットワークの構築、志を培う場を継続的に提供することを目的として開催する800人規模のカンファレンスです。2005年に第一回を奈良県飛鳥で開催したことから、「あすか会議」(ASKA=Assembly for Synergy, Knowledge and Ambition)と名付けました。ご招待する政治家、経営者、学者、マスコミ、教員の方々とグロービスのMBAプログラムの学生・卒業生だけが参加できます。

http://mba.globis.ac.jp/style/asuka.html

 

ボクごときが取材を申し込んでも断られそうな感じのイヴェントだ(笑)。

 

まあ、それはさておき、せっかく見てとったメモをご披露したい。動画は1時間16分に及んでいる。

 

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「ジャズから学ぶマネジメント」

 

前日は岩瀬氏と松永氏がピアノでセッションをやったもよう。岩瀬氏はピアノも達者だとか。

また、岩瀬氏からベネッセの原田氏もジャズ・ドラマートしてなかなかのウデという発言あり。

 

「ジャズと経営」は関係ないわけではない。

 

高校からジャズを聴いていた岩瀬氏は、人格形成にも影響があったと言及。

「クラシックは先が読める=サラリーマン人生」みたいとのこと。

メロディとコード進行だけのジャズの自由さはそこにはない。

ジャズはベンチャー企業に近い。先が見えないなかでものを作っていく。

お互いの音を聴きながら作っていくのがジャズ。これを会社経営に持ち込むと、社員としては迷惑(笑)。

 

松永氏は小6でピアノを始めた。これは音楽家としてはかなり遅いスタート。

そのハンディを克服するため、自分に合っていると思った即興に興味をもつ。

ピアノは独学。理論は習っていたが、ピアニズムという点では我流で、ハノンもやっていない。

まずはどうピアノを練習するのかから考え始めた。

最初からオリジナルの練習方法で、ほかの先にピアノを始めた同年代にどうやって追いつくか、追い越すかを考えていた。

例えば、右と左をバラバラのテンポで練習するとか。

セッションでなにを演奏しているのかわからないようなとき、そのわからないリズムをそのまま覚えてしまう。こうした方法論を突き詰めてしまおうと思った。

早く追いつくためには、普通の方法ではダメ。

メトロノームを5個かって、バラバラに鳴らしながら弾く練習、というような普通ではないことをやっていた。

 

岩瀬氏が、ミシェル・ペトルチアーニが右手と左手を半音ずつずらす練習をしていたと言うと、松永氏は「トーナルの音階を半音ずらして練習していた」と。おかげで全音階でフラットになんでも弾けるようになったそうだ。

 

即興は誰でもできるが、その表現に広がりをもたせるにはなにかしらの努力が必要。

とくに集中力は必要になる。そして、ほかの楽器の音をちゃんと聞けるようになるためにいろいろな訓練も必要になる。

 

ジャズは決まりがあるなかで自由を表現できる音楽である。

それはさまざまな法的・社会的制約があるなかで結果を出さなければならないベンチャーの起業に通じる、と。

 

松永氏がどうやって世界的なピアニストになったのか? の話題について。

 

小6でピアノを始めて、1〜2ヵ月後に近所のジャズクラブへ行った。松永氏には自信があった。しかし、店では受け入れてもらえない(小6なので当たり前)。では、どうするか……。つまり、やりたい想いだけではダメだということ。

 

「スタンダードを覚えていったら一緒に演奏してくれるのではないか」という作戦。これによって、弾かせてもらえるチャンスが広がった。

松永氏は練習も必要だが、とにかく実践を積まなければいけないと思っていた。

 

そうこうするうちに、“ヘンな中学生ピアニストがいる”と評判になっていく。

高1(15歳)のときに学校を辞めてプロになる決意をする。

 

ただ、デビューも決まっていなかった。しかし、死に物狂いで進んでいるうちに、チャンスが巡ってきた。

 

17歳でハービー・ハッコックと共演。彼に呼ばれてニューヨークへ。

 

こうした音楽に特化した人生を送ってきたように見える松永氏ではあるが、「音楽だけでは成長しない」とも思っていたとのこと。

自宅にピアノを置かなかった時期もあったり、9年で14回も引っ越したり。

 

音楽は右脳(直感)、ビジネスは左能(理論)と言われるが、どちらかひとつだけでは成立せず、両方が融合することで刺激となる。

これはビジネスで“流れを読む”ときにも役にたつ。

 

人になにかを伝えるには、この両方のバランスが大切になる。

そして、人の上に立つ人ほど、そこにある“情熱”をどう伝えるかが必要になり、それが絶大な効果を生む。

 

松永氏の作曲法はコンセプチュアル。

自由に作るよりも、依頼があって課題に沿った作曲をする方が好き。

結果を出さなければ意味がないという点では建築家の作業に似ている。

これはカスタマーセントリックであり、マーケティングマインドに共通する部分である。

 

好奇心やエネルギーをもち続けるには?

 

変化を続けるのは難しい。

松永氏はそれを回避するため、例えばオーケストラと共演するときにはオケの楽器を買って揃えたりした。

初めてアメリカに行ったときは、セントラルパークで野宿したりした。

CDショップでAからZまでを通して買って聴いたりもした。

 

これはビジネスでも、膨大なデータを自分で触ることによって、肌感覚でなにかがつかめるようになるのと似ている。

 

人間の能力を超えてしまうのではないかと思うぐらいのことをしたところで、ようやく別のものが見えてくるものだ、と。

 

守るものがあればチャレンジすることに恐怖を覚えるが、前を見続けていれば実現できる。

 

求められるものを作るだけでは可能性も狭くなってしまう。

 

ミュージシャンは、どうやって相手がやろうとしていることがわかるのか?

 

これに関して、歌伴は難しいと両者。

ピアニストはヴォーカルを“立てる”意識が働くので、そのスタンスを学ばなければならない。しかしそれはとても難しい。

気を遣う。

それは会社に似ているかもしれない。リーダーシップを発揮しながら、一致団結も率先してやらなければならない。

 

ビジネスおトレーニングでも、即興を取り入れるものが増えている。

これは「予定調和」が役に立たないことの反動。

役割を変えながら違う答えを導き出したりする。こうした方法論は発見につながる可能性が高くなる。組織の活性化にも役立つ。

 

自分のなかに“フレームワーク”があると、即興にも対応できる。

 

松永氏はこれに対して、自分は右脳だけではなく左脳も使ってピアノを弾いていると指摘。

 

会社が指揮に従うオーケストラのように硬直化しているときはどうしればいいのかという会場からの質問。

 

オケもバンドもソロも観客からすれば同じで、演奏者がなにを伝えたいのかが問われるのが音楽である。

ジャズ的な自由さがそういうときに効果を発揮できるのは、土台にしっかりとした部分(人)がいることが前提になるだろう。

 

本番で100%の実力を発揮するために準備していることはという質問。

 

イメージートレーニングはしている。

成功のイメトレは大切。逆算して準備する。

Can I do. からHow can I do.というふうに考えられるように。

時代は変わり、ポジティヴだけではダメでその質が問われている。

 

以上。