音楽ランキングにはどんな“不純物”が入っているのだろうか?

 

15180049473_660454af8e_m Order by Fabio Zenoardo Photography

 

オリコンは日本のランキング・ビジネスのパイオニア。

 

「ぎんざNOW!」をオンタイムで観ていた世代にとっては(on air=1972年〜1979年)「しゃちょぉ〜」と呼ばれて出てくるオリコンの先代社長・小池聰行氏を真っ先に思い出したりするのだが(笑)。

 

ネットでその小池聰行氏の長男で現社長である小池恒氏のインタビュー記事があった。

 

タイトルが「オリコン50年「ランキングに不純物は入れたくない」」という刺激的なものだということもあったので目を通したら、おもしろい。

 

 

以下は記事からのサマリー。

 

音楽ランキングの役割として、「ブランディング機能」「プロモーション機能」「販売促進機能」「収入予測機能」「マーケティングツール」の5つを挙げている。

 

「プロモーション機能」とコンテンツ・マーケティングはかなり関連性があるので、ランキングという表現方法がコミュニケーション・ツールとして有効だという考え方は理解できる。しかし、体感的にランキング・ビジネスはプロモーション機能の発達が優先され、プロモーション・ツールとしてしか活用されていないようなイメージがあったのも確かではなかろうか。

 

ネット配信による多様化で、オリコンが一貫して死守している「CDだけのランキング」に対する批判が高まっていることに対しては、オリコン側でも調査を重ね、実際に配信が無視できない時期もあったことを認めたうえで、スマホの普及によって「着うたフル」の利用者が減少し、音楽配信への関心が薄れている現状を指摘している。

 

おもしろいのは、嵐を筆頭にジャニーズの動向を引用して、音楽販売に対するパッケージ販売の関心が高まっているという指摘。データのみの販売の限界を見越しているところはさすがに業界を俯瞰し続けている会社の意見だと感じる。

 

我々のランキングは「本当に正しいデータで、ヒット感を伝えるものでなければならない」というのが基本理念です。動画サイトの再生回数を加算するとしても、その再生回数は恣意(しい)的に操作される恐れがあります。そもそもウチのランキングの対象は「音楽を聴くことに対価を払う」ことを重視していますから、簡単には取り込めません。

また、配信については、ジャニーズのような大きなところが参戦していません。それに、ランキングを構成する要素が変わると、数十年前のデータと比較できないという問題も出てきます。

 

パッケージという意味ではAKB系の動向のほうが無視できない。もはやパッケージとは言えずに“引換券”ほどの認識しかないそれと音楽メディアをどう比肩するかは、オリコンでも悩ましいところなのだろう。

 

お時間があれば、一度AKB48の実際のイベントに行ってみてください。ファンは1日、すごい楽しい思いをして帰っていくわけですよ。東京ディズニーランドで1万円を使う人がいる一方で、こういう使い方があってもいいと思います。

AKBのCDを10枚買って、イベントに行く。握手の合間には、ファン同士がコミュニティーで交流したり、新人の子のミニライブが開かれていたりする。すごく盛り上がっているんですよね。それをきちんと見た上で、AKB商法が正しいのかどうか考えてほしい。

ウチが把握している限り、大体平均すると10枚とか。会場に来ている人は7、8枚だと思うが、実際7、8千円の対価を払ってイベントに来ているということを考えたときに、AKB商法は決して間違っていないと思います。

 

これに対してオリコンの判断は、「たとえば1万枚買っていたとしても、20枚分しかカウントしないこともあります。そこまで厳しくやらないと、社会の信頼を得られないので。」と答えている。

 

ただ、この回答は多分にポーズであるように感じざるを得ない。なぜなら、1万枚を20枚としてカウントする根拠と証拠を常に開示しなければならないからだ。

 

こうした話は、実は昔からなかったわけではない。親がごっそり買って発売初日のランキングを上げていたという話は、以前からあったのだから。

 

そうなると、プロモーションと売り上げ、その結果としてのランキングに正当な意味があるのかという根本的な問題になりかねないのではないだろうか?

 

ランキングは公明正大であることを軸にしすぎるが故にマーケティングの資料としては逆に信頼度が低くなってしまうというジレンマに陥ることもありうる。

 

考えてみれば、ダウンロードにマッチしないジャンルの音楽も少なくないだろう。そこではまだまだ、縦軸でのランキングの意味が重要で、必要とされていることも多い。

 

ランキングを扱う企業としてより大きなマーケットをどう処理するかは大きな課題だが、大きなマーケットと対抗して自らの権威を守るだけでなく、ランキング自体の存在を必要としているジャンルにもっと目を向けて、音楽産業との協業を考えていただきたいと思う。