ギャラリーストーカーは文化を蝕むたちの悪いウィルスである

月〜金は録画しておいた地上波MX「モーニングクロス」を、起きてきた9時か10時ごろから飛ばし飛ばし(東京都のインフォメーションや芸能ニュース、CMなど)しながら観ているのだけれど、日替わりのコメンテーター陣のオピニオンクロスというコーナーが、あまりテレビでは取り上げないテーマを掘り下げるのでおもしろくチェックしています。

3/5は毎日新聞記者の中嶋真希氏が“ギャラリーストーカー(アートストーカー)”について解説。

記事も毎日新聞のサイトに上げてあるというので、合わせて紹介したいと思いました。

“ギャラリーストーカー”とは、要するに展示会の観覧者の一部に、節度を超えた出展者への接触をはかろうとする輩がいる状態のことを指しています。

記事では、女性のアーティストに対して、作品にかこつけた性的な会話や接触をはかろうとする例が挙げられています。

作品を買い上げて食事に誘うというゲスな例もあるというから困ったものです。

挙げられている例はほぼわいせつ事例に該当するような悪質なものと思われますが、それ以外でも“ギャラリーストーカー”は持論の押しつけやアーティストの拘束といった、犯罪とはいえないけれど迷惑行為であるケースも多いのではないかと思いました。

“ギャラリーストーカー”の犯罪行為手前の損害としては、

1)精神的な圧迫行為

2)営業活動の機会損失

3)鑑賞環境の破壊

が考えられます。

下心の見える感想や、マウンティングを目的としたアドヴァイスが生産的であることはほとんどありません。

むしろ、アーティストの気力を削ぐものでしかなく、百害あって一利なしでしょう。

作者(表現者)と会話できる機会に「舞い上がる」こともあるでしょうが、だからといって余計なことを言っていいわけはありませんね。

なにより、その場の大多数の観客の気分を害することは、ギャラリーという公の場で自己表現の機会をやっとの思いで実現させるアーティストたちに対する侮辱以外のなにものでもないと言うことが、もっと知られるべきでしょう。

この話に反応したのは、私も音楽のライヴ取材で会場を訪れたときなどに、こうしたシチュエーションになるときがあるからです。

招待客として終演後の楽屋に通されることもよくありましたが、個人的にはとても苦手で、関係者に見つからないようにさっさと会場を後にすることも多かったのを白状しましょう。

その理由は、「終演直後にホストへかける言葉を用意できることが少ないこと」。

ダメ出しをする立場にはないですし、そのダメがどういうダメなのかを検証する時間的余裕もないわけです。

そうなれば、「良かったです」しか言葉がないわけで、「今日はお招きありがとうございます」といった儀礼はあってしかるべきかもしれませんが、終演後の慌ただしさのなかでわざわざ手間を取らせてやることなのかと思っていました。

パフォーマンス後のアーティストも疲れているのにこうした儀礼を何人も同じように繰り返すのは苦痛なのではないかと思うのです(そちらは経験がないので、「良かったです」だけでも励みになるという人がいるかもしれませんから独断するのはよくないかもしれませんね)。

もっと近しい間柄で、ねぎらいの言葉がかけられるのであれば、この指摘には該当しないことを加えておきましょう。

「会いに行けるアイドル」界隈では、地下アイドルを含めて観客との線引きが(営業的な意味合いが強いため)ハッキリしているようですが、エンタテインメントから少し距離を置いたアートの世界になると途端にこのあたりの“マネジメント”が脆弱になるような感じを、この放送と記事で改めて感じた次第です。

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