外山喜雄・恵子写真展が教えてくれた「ジャズは現場で起きているんだ!」ということ

「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」という『踊る大捜査線 THE MOVIE~湾岸署史上最悪の3日間』のクライマックス・シーンでの主人公・青島俊作(織田裕二)のセリフも、説明なしには意味不明になりつつある今日この頃。

“現場で起きてるんだ!”と強く印象づける写真展を観てきました。

タイトルは、「ニューオリンズ行進曲─ルイ・アームストロングを生んだ街─」。

外山喜雄・恵子の夫妻が2022年8月に東京・新中野のギャラリー冬青で開催した写真展。

夫妻は1967年に船に乗り、ジャズの武者修行のためにニューオーリンズへ渡ったというリヴィング・レジェンド。1975年に結成した外山喜雄とデキシー・セインツはいまもニューオーリンズ・ジャズの魅力を伝える活動を続けています。

この写真展は、譲り受けたコダック・レチナIIにモノクローム・フィルムのトライXを装填して撮り始めたものだそうです。

レチナIIというのはクラシック・カメラファンならおなじみの、前面にあるカヴァーを開けるとレンズが飛び出してくる構造で、いまのデジカメでは想像が付きにくいぐらい操作が難しいカメラです。

ちなみにボクは、蛇腹でレンズがせり出してくるマミヤ6というカメラを所有していましたが、ブローニー・フィルムの扱いや、ピントからシャッタースピード、絞りまでオール・マニュアルな調整に手こずってました。カラッとした描写は魅力だったんですが、もう手元にはありません。

外山夫妻は、フィルム現像やプリントまでを独学でマスター。写真展ではプロのプリンターが仕上げたとのことでしたが、こうした“のめり込み”があればこそ、記念写真では表現できない描写が可能だったのだと思います。

ニコンFも導入しての“ジャズの武者修行”を綴ったこの写真展。まずなによりも被写体との距離の近さが印象的でした。特にミュージシャンとの距離は、やはり演奏者ならでは。

それ以上に、50年前のニューオーリンズの風景や風俗が記録されているところも魅力的。

解説では触れられていなかったようですが、当時も東洋人がカメラを構えているのは、かなり勇気が必要だったのではないかと想像すると、1枚1枚の貴重さがさらに増していく感じがしました。

外山夫妻には、日本ルイ・アームストロング協会(http://wjf4464.la.coocan.jp/)の取材でお世話になったりと、そのパワフルな演奏に魅了されていたのですが、今回は耳ではなく、その目を通して体験してきた“ニューオーリンズのジャズ”を披露していただき、やっぱりまだまだジャズは奥深いなぁと認識を新たにしたギャラリー訪問でした。