【我田引水】jazzLife2018年4月号 執筆後記

 

富澤えいちの執筆担当記事の紹介です。

 

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名知玲美『ブリリアント・カラーズ』interview

ヴォーカリスト名知玲美さんへのインタヴュー記事です。

7人体制というユニークなバンドで臨んだレコーディングについていろいろと語ったいただきました。

 

こちらがディスク・レヴュー。

 

 

 

 

守屋純子オーケストラ ライヴ・レポート

渋谷・大和田のさくらホールで行なわれた守屋純子オーケストラの定期公演のライヴ・レポートです。

今年の目玉は長谷川等伯。

ちょうど「熱風」で長谷川等伯の“異形性”を知ったばかりのところだったので、とても興味深く観ることができました。

 

 

 

ディスク・レヴュー

森岡典子『イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト』

 

 

 

ジー・ベイビー『ヒア・カムズ・ジー・ベイビー』

 

 

 


 

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音楽のストリーミング・サービスは功罪を問われる暇もなく産業の一画を成すようです

 

田中宗一郎さんへのインタビュー(黒船Spotifyが日本の音楽文化を救う? 田中宗一郎インタビュー|FUZE)が目に止まっていたので、Spotifyについての記事を書きたいと思っていたのですが、なかなか手つかずのまま半年以上が経ってしまいました。

そのあいだに、Spotifyは2兆円規模の業績へと成長し、2030年までには4兆5千億円という収益をたたき出す産業になるという予測が出たりしていました(ストリーミングの成長により音楽産業は2030年までに約4兆5000億円の収益に復活と予想。去年は1兆7000億円|rockin’on.com)。

2016年にはアメリカ市場でも2桁成長したことで、ゴールドマンサックス証券でも音楽産業の回復を示唆(ただし4兆円規模の半分ぐらいの予想のようですが)、その軸としてストリーミング・サービスの存在が外せないものとなっているのは、すでに確定のようです。

田中宗一郎氏は日本への波及に関して、フィジカルCDへのニーズが強いことが障壁となっていて、そのほかにも日本特有の実態の無いものへの不信感をぬぐい切れていない状況を指摘。

このガラパゴス化が日本の音楽産業の首を絞める心配をしています。

 

もう世界中で下手したら日本だけだからさ、こんな便利なものを誰も使わない国って。それに、ケンドリック・ラマーを日本に呼ぶためにこれから彼のCDを5万枚売ることより、Spotifyで20万人が彼の音楽を聴いて、10万人が彼のファンになることのほうが現実的だし、手っ取り早いという音楽評論家的な視点もあるにはある。でも、それ以上にとにかく楽しいんですよ、Spotifyで音楽を聴くのが。とにかくエキサイティングなの。

 

実は、音楽ライターとしての立ち位置も関係するので、この問題はあまりC調に語れない、語るべきではないと思っていたのですが、音楽が好きだという立場に立って言えば、ボクもやっぱり「Spotifyで音楽を聴くのが楽しくてエキサイティング」という意見に同意なんですね。

すでにライターという職業についても意識を改革しなければならないと思っていたこともあって、それはアウトプットをどうするかという問題なわけですが、音楽業界の在り方の変化はインプットの問題となって、要するにイン&アウトの両面で自分の在り方を考え直さなければならない時期に来ているというわけです。

ということで、打開策を考えて、実行に移す年としましょうか、今年は。

 

あ、打開策というのは音楽産業に対してのものではなく、あくまでもライターとしての些末な範囲でのことなので、あしからず。

 

コルトレーンは神になる前にすでにAIだったんじゃないでしょうか?

 

つい最近、AI に関する記事を書いたばっかりだったのですが(AIによる芸術は人間を凌駕するのかな?)、音楽の特にジャズに直接関係する記事を見つけてびっくりしてしまいました。

 

 

この記事は、コルトレーンの音楽についてルーカス・ゴンゼという人が分析したもの。

ゴンゼ氏は、バークリー音楽大学の書店でユゼフ・ラティーフが著わした『Repository of Scales and Melodic Patterns』という本をたまたま見つけ、その本に書かれていたスケッチを発見します。

これがコルトレーンの書いたメモで、不思議な図を謎解いていくと、ディミニッシュ・トライアドが表われ、そこにはスキュタレー暗号になるようになっていたというのです。

スキュタレー暗号は確か、『ダ・ヴィンチ・コード』に出てきたんじゃなかったかな。

ここで問題になるのは、 コルトレーンがなにかを発明しようとしていたのではなく、古来からあった方法で音楽を「法則に則って遊んでいた」ということ。

すなわち、音楽は少なくともバッハ以降に数学的に定義付けされるようになっていて、その法則(一部でそれを神格化していたとしても)が音楽を支配していることに気づいている音楽家がいたということです。

もちろん、そこから生まれた音楽が、数学的であるために感情とは切り離されることはなく、むしろ論理的でありながら不条理なほどに感情を揺るがすという、不思議な作用をもたらすことに興味をもった音楽家が多かったということではないでしょうか。

そうなると、11音階とか無調というアプローチはちょっと「学がない」ことになっちゃうんですが、そのあたりはまた調べてみましょう。

 

 

 

 

「美しき天然」のモダニズムに気づいた清水靖晃のスゴさは現在もフランスが認めていた

 

ネットで目にした気になる記事。

死と再生をテーマにした日本の唱歌がBGMのクレイアニメーション|カラパイア

ここで紹介されていたのがこの映像。

Utsukushiki Tennen from Romane Granger on Vimeo.

フランスの高等職業教育機関、グランゼコールの一つであるパリの『国立高等装飾美術学校』の学生ロマン・グレンジャー氏の制作したアニメーションのタイトルは「Utsukushiki Tennen(うつくしきてんんねん)」とある。実はこの作品のBGMには、日本の明治時代の唱歌『美しき天然(うるわしきてんねん)』が使用されているのだ。

このサイトがこの話題を取り上げたのは、この作品が2017年の「オタワ国際アニメーションフェスティバルとサヴィニーフェスティバルの公式セレクション」になったからのようです。

ボクも「日本の唱歌とフランスの学生が作ったクレイアニメーションのコラボ」に興味をもったのですが、それ以上に注目してしまったのは、「映像内でこの歌っているのは音楽プロデューサーの清水靖晃氏だそうだ。」という記述。

“音楽プロデューサーの”と記しているところに、ライターさんが清水靖晃さんを知らないで書いているんだろうなーという気配を感じたので、ついつい取り上げてしまったわけです。

この音源、新たに清水靖晃さんがこの映像のために手がけたものではなさそうなので調べてみると、1982年リリースの名盤『案山子』に収録されているものと判明。

清水さんが“和”に大きく傾く記念碑的な作品で、そのなかでもこの曲は音楽の“俗”の部分を象徴するような要素を含んでいると言えます。

歌われているのは長崎・九十九島で、ボクも数年前に訪れたことがある風光明媚な場所で生まれた曲ということで、感慨もひとしお。

この曲、一般的にはチンドン屋の音楽として知られていると思いますが、清水さんはそれを世界に通用する民族メロディとして真正面から向き合い、その痕跡を現在のフランスの若手アーティストがしっかり拾い上げた、ということになるのでしょう。

こうした“前例”がなければ、クラシック・ギターでのこんな演奏も生まれなかったに違いありません。

村治佳織

 

 

【我田引水】「jazzLife」2018年3月号 執筆後記

 

富澤えいちの執筆担当記事の紹介です。

 

 

 


 

Voice of Strings『ヴォイス・オブ・ストリングス』インタヴュー

志賀由美子さんのアコースティック・ギターと、穂積翔太さんのエレクトリック・ギターのツイン・ギターによるユニット“ボイス・オブ・ストリングス”のセカンド・アルバムです。

デビュー作となった前作では“アンド・モア”的な参加メンバーがいて、物語的な方向性の作風でしたが、今回はストレートに「2本の異なるサウンドのギターでスタンダード曲を演奏するとどうなるのか」という、いわゆる“素顔のボイスト”を楽しめる内容。

こちらがディスク・レヴューです。

 

 

 

 

佐々木優花『レミニッシェンツァ』

 

フルート奏者の佐々木優花の4作目。ピアノとアレンジ担当は巨匠デヴィッド・マシューズです。またまた“マシューズ伝説”を更新するエピソードを聞くことが出来ました(笑)。

 

 

 

小林桂『ザ・スタンダードII』リリース記念ツアー・ライヴ・レポート

 

小林桂さんがモーション・ブルー・ヨコハマで行なったライヴのレポートです。

圧巻というか、貫禄が出てきましたね〜。1セットだけの(入れ替え制だったので)逢瀬でしたが、グッと引き込まれて、あっという間の1時間ちょっとでした。

 

 

 

ディスク・レヴュー

ケンネル青木『SOUR SWEET』

 

 

 


 

 

 

CDは壺やお札だったと見抜いた金爆の鬼龍院翔のお話がおもしろかったんです

 

ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんのインタビューをもとにした記事がおもしろかったので紹介したいと思います。

 

 

まず最初に、彼らの「#CDが売れないこんな世の中じゃ」をぜひ聴いてください。

久々にはまりそうな予感(笑)

インタビューで鬼龍院翔さんは、エアバンドと言うちょっとギミックなスタイルで自分のバンド活動を始めたことを語っていますが「生演奏でない音楽は悪である」という認識に対する反抗心があったことを吐露しています。

そして、音楽は宗教であるという持論に言及。

要するに、ファンと言う名の信者にお布施として作品を買わせるという考えであるというわけです。

彼が作品性と作品、もっといえば商品とを分けて考えている点は非常に興味深いと思います。

グッズ化している、あるいはそうせざるをえないCDの市場に対する警鐘でもあるといえます。

また後半部分の「ファンの方がへそを曲げない程度にファン以外の方が楽しんでいただけることをやらないといけないんですよね」という発言も意味深です。

著作権フリーの楽曲もリリースしているとのこと。

なかなかジャズに応用するのが難しいの内容ではあるのですが、考えるべき要素が多い、良いインタヴューですね。