JASRACこと日本音楽著作権協力のニュースは、カラオケやBGMの使用料徴収ばかりが話題となっているきらいがある。
この記事では、業務のDX化に焦点をあて、JASRAC内で推進されている著作権管理に関する変革の内容を紹介している。
DX化には、それを必要とする課題が存在するわけで、すなわち JASRACが抱えていた問題もここでは明らかにされていることが興味深い。
JASRAC理事長伊澤一雅氏へのインタビューによって構成。
以下、記事をサマリーする。
前提
SNSやテクノロジー発展により「DIYクリエイター」が増加
その結果、著作権管理を十分に行えず、対価の還元が受けられていないクリエイターも増加
著作権管理を個人で行なうのは難しいというハードル
問題点
対価の還元に必要なのは、クリエイターと著作権管理団体が信託契約を結んで、団体が管理委託業務として楽曲使用者から使用料を徴収、クリエイターに分配するという仕組みを成立させること。
まず第一に、クリエイターが管理団体との契約を行えていないことが大きな問題。
次に、楽曲の無断利用やなりすましが(SNSやテクノロジーの発展の弊害として)増えている問題。これには、自分の曲だと証明することが難しくなっている(テクノロジーによって巧妙化している)問題と、なりすましや無断利をする輩の正体がSNSの特性上、匿名化することで追求しにくくなっている問題が併存じている。
また、個人クリエイターが著作権管理団体を通じて使用料の分配を受けられるという仕組みを知らないことも問題のひとつ。
KENDRIXの開発
プロアマを問わず、すべてのクリエイターが参加できるプラットフォーム。
楽曲の音源データをKENDRIXにアップロード→楽曲のダイジェスト機能をブロックチェーンに保存→存在証明ページの発行
KENDRIXからJASRACとの信託契約の締結も可能に(これまでの書類手続きがネット完結のeKYC=本人確認で可能に)。
附言
ブロックチェーンの登場は、著作権管理団体にとって脅威と言われていた。管理が自動化され、管理団体の仕事がなくなると恐れたからだ。
しかしJASRACでは、従来の業務にブロックチェーンなどのDX化をダイレクトに取り入れ/取り込むのではなく、別のスモールプロジェクトとしてスタートさせ、これまでJASRACを意識していなかった個人クリエイターなど若い世代を対象に、楽曲登録手続きを簡便にするツールとして開発を進めたことが、ローンチ成功の原因としている。
KENDRIXの成功は、JASRAC本体業務にも好影響を与え、今後は音楽著作権管理において、実現できていなかった公正な利益分配をより促進するエポックとなったようだ。
国境を越える問題などまだまだ解決すべきことは多いので、展開をウォッチしていきたい。