「美しき天然」のモダニズムに気づいた清水靖晃のスゴさは現在もフランスが認めていた

 

ネットで目にした気になる記事。

死と再生をテーマにした日本の唱歌がBGMのクレイアニメーション|カラパイア

ここで紹介されていたのがこの映像。

Utsukushiki Tennen from Romane Granger on Vimeo.

フランスの高等職業教育機関、グランゼコールの一つであるパリの『国立高等装飾美術学校』の学生ロマン・グレンジャー氏の制作したアニメーションのタイトルは「Utsukushiki Tennen(うつくしきてんんねん)」とある。実はこの作品のBGMには、日本の明治時代の唱歌『美しき天然(うるわしきてんねん)』が使用されているのだ。

このサイトがこの話題を取り上げたのは、この作品が2017年の「オタワ国際アニメーションフェスティバルとサヴィニーフェスティバルの公式セレクション」になったからのようです。

ボクも「日本の唱歌とフランスの学生が作ったクレイアニメーションのコラボ」に興味をもったのですが、それ以上に注目してしまったのは、「映像内でこの歌っているのは音楽プロデューサーの清水靖晃氏だそうだ。」という記述。

“音楽プロデューサーの”と記しているところに、ライターさんが清水靖晃さんを知らないで書いているんだろうなーという気配を感じたので、ついつい取り上げてしまったわけです。

この音源、新たに清水靖晃さんがこの映像のために手がけたものではなさそうなので調べてみると、1982年リリースの名盤『案山子』に収録されているものと判明。

清水さんが“和”に大きく傾く記念碑的な作品で、そのなかでもこの曲は音楽の“俗”の部分を象徴するような要素を含んでいると言えます。

歌われているのは長崎・九十九島で、ボクも数年前に訪れたことがある風光明媚な場所で生まれた曲ということで、感慨もひとしお。

この曲、一般的にはチンドン屋の音楽として知られていると思いますが、清水さんはそれを世界に通用する民族メロディとして真正面から向き合い、その痕跡を現在のフランスの若手アーティストがしっかり拾い上げた、ということになるのでしょう。

こうした“前例”がなければ、クラシック・ギターでのこんな演奏も生まれなかったに違いありません。

村治佳織