パリのオペラ座バレエ団という新界最高峰において、最上級団員に初のアフリカ系と日本人が昇格したというニュース。
海外で活躍している日本人は野球やサッカーだけじゃないんだよ、という感想で終わってしまうんだともったいないので、もうちょっと深掘り。
スポーツにも白人優位(特にフィジカル)はあるけれど、バレエのような独得の“美意識”を芸術性と絡めて発展してきたジャンルでは、人種差別以前の“門の狭さ”があると思う。
演劇の“当て書き”のような、あるいはジャズで言う訛りのような。
その平準化は世の流れであるとともに、アイデンティティとしてどうなのかという異論も必要な
のではないだろうか。
この昇格は、人種差別問題にも積極的に発信してきたディオップ氏にとってエポックになり、その意味において有意義なことであると思う。
オニール八菜氏の昇格が、付属学校以外の出身者という”異例”の登用だったことも、政治的ではあるが、時代の“扉”を開いた大きな一歩だと称えたい。
いずれにしても、身体表現による芸術がひとつの“規範”を拠り所として体裁を保ってきた
時代は終焉を迎え、少なくとも芸術のうえでは「人類は皆兄弟」という理念のもとに再構築されていくようだ。
その良し悪しは、圧倒的な結果を生むか否かにかかっているはず。
その重責を背負ってしまったディオップ氏とオニール氏の活動に、期待を込めて注目していきたい。