noteにアップした記事の紹介です。
カテゴリー: ジャズキュレーション

『かしむのなしは』は仙台がいかにジャズの揺り籠として貴重な都市だったかを記録に残した労作[読書memo]
2022年秋、ネットで流れてくる情報のなかに、仙台のジャズの歴史を綴った本が上梓されるというものがあった。
おもしろそうなのでポチろうと思ったが、ネットでは直接の購入ができないタイプのものだったので、仕方なく版元に問い合わせたら、仙台市内の書店での販売のみということがわかってきた(版元から直接は買えなかった)。
税込3,000円の本を仙台まで買いに行くのもオツだし、なにより定禅寺ジャズ・フェスティバルが開催されるタイミングだったから、一石二鳥の旅にできるかもしれないと画策したが、諸事情で断念。
そこで、その本が置いてあるという書店に凸電して、郵送か宅配はできないものかと尋ねてみると、支店間なら配送できるので、そちらの支店に注文してくれれば購入は可能だという答えが返ってきた。
ということで、最寄りの支店を探すと、横浜そごうにある紀伊國屋書店横浜店が見つかったので、出向いて注文&取り寄せ、一週間ほどで引き取りに再訪して入手、ということで読むことができるようになったのがこの本だ。
3,000円はちょっと高いかなと思ったが、ハードカバーで400頁超、写真も多いので、かなり努力されたことが伝わる造りになっていることが、手に取ってみてわかった。
「かしむ」は「むかし=昔」、「なしは」は「はなし=話」と、いわゆるバンドマンことばと呼ばれた倒置法を用いたもの。つまり、「昔の話」というタイトル。
杜の都・仙台に根ざしたジャズ文化のルーツを解き明かすとともに、終戦後の世界情勢を語るうえでも貴重な証言が盛り込まれた、文化人類学の資料と言っても過言ではない。

挾間美帆が推すサリヴァン・フォートナーとセシル・マクロリン・サルヴァントがなるほどおもしろいので書き留めておく[ジャズ拾い読み]
このところジャズにかなりベットしている感のある「ブルータス」誌。
作曲家で指揮者の挾間美帆へのインタヴューを掲載(アップロード)していたので読んでみたら、とてもおもしろかった。
ジャズはアルバムで聴く音楽ではない、と公言する彼女が「衝撃的だった」と語るのは、ピアニストのサリヴァン・フォートナーと、彼のパートナーでヴォーカリストのセシル・マクロリン・サルヴァントのパフォーマンス。
「2人のリラックスしたパフォーマンスはYouTubeにもアップされている」と記されていたので早速探してみると、確かにプライヴェートらしき空間でラフに録ったのであろう動画を見つけることができた。
いや〜、確かにライヴを観たくなる。
リラックスしているのに濃密で圧倒的な2人の掛け合い。
これはぜひチェックしてほしい。
もう1人、ジョエル・ロスも推しているんだけれど、この難解で刺激的なヴィブラフォン奏者を、挾間美帆が言及しているラージ・アンサンブルで観たり聴いたりできる動画・音源が見つけられなかった。
ジョエル・ロスは、短い尺ではその持ち味(彼特有の神秘性)が上手く伝えられないと思うので、30分ぐらいの尺のMVを挾間美帆プロデュースで、できればラージ・アンサンブルとのセッションによる作品に仕立ててくれると嬉しいのだが、いかがでしょうか。

otto&orabuの演奏にぶっ飛んだのでメモしておきます
NHKの番組「no art, no life」を録画してチェックしています。
5分間の短い番組ですが、中身はかなり濃い。
概要は「既存の美術や流行、教育などに左右されず、誰にもまねできない作品を創作し続けるアーティストたち。唯一無二の作品が生まれる瞬間を見逃すな!」というもの。
で、この回はotto&orabuというバンドを紹介。
心地良く不ぞろいな音が人々の心を揺さぶる。otto&orabuの演奏はズレることを恐れない。日本各地の“表現せずにいられない”アーティストを紹介する番組。既存の美術や流行・教育などに左右されない、その独創的な作品は世界から注目を集めている。誰のためでもなく表現し続ける人たちが放つ、圧倒的なすごみ。今回は鹿児島しょうぶ学園の音楽グループotto&orabu。地元でのライブを取材し唯一無二の表現に迫る
確かに心揺さぶられました。
というか、ジャズに通じるものがある、と。
鹿児島の音楽フェスに出場していたと思いますが、
こうした取り組みが広がるといいなぁ。

#定禅寺ストリートジャズフェスティバル 3年ぶり開催への期待と不安
河北新報の記事で、宮城・仙台の日本を代表する野外音楽街フェス“定禅寺ストリートジャズフェスティバル”が、3年ぶりの開催に向けて試行錯誤しているとのこと。
今年の開催予定は9月10日と11日。
4月6日に出演アマチュアバンドの申し込みが始まったとのことですが、出足が鈍いそうなのです。
このフェス、仙台のみならず東北近県から関東も含めて応募が殺到、出場のハードルも高いことで知られています。
それが不調?
というのも、やはりコロナ禍が影響しているとのこと。
主催の協会が設定した出演希望者に課した条件がネックになっているもようなのです。
まず第1ハードルが「ワクチン接種済」。18歳以上は、ワクチンを3回、5〜17歳は、ワクチンを2回。
そして2つめが「出演当日を含めて3日以内にPCR検査もしくは抗原検査で陰性を確認」というもの。
このフェスはほとんどが屋外会場だったはずなのですが、この条件付けはかなり厳しいですね。
なお、この条件は4月1日時点でのもので、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザーの東北医科薬科大学・藤村茂教授の意見をもとに適時変更するとのことです。
参照:申込方法の注意点(https://www.j-streetjazz.com/entry/)
ちょっと過剰かのような書き方をしてしまいましたが、3年ぶり開催に向けて万全の体制を敷こうという意気込み、予測不能なコロナ禍に対してなんとか抗いたいという気概を感じさせる体制ではないでしょうか。
行政頼みではない民営フェスならではの苦肉の策だとは思いますが、この条件付けで18歳未満の応募がかなり制限され、それが申請の足かせになっているもようです。
知見をフレキシブルに活かして、出演者、参加者に寄り添った開催ができるように、がんばっていただきたいと思います。

2022/04/01のニュース拾い読み(動画)
4/1のニュース拾い読み(音楽ライター富澤えいちの17ライブ配信用)
を配信します。
音楽ライター富澤えいちが平日午前10時ぐらいまでのニュースのヘッドラインをピックアップして、コメントを付け加えるという内容の配信です。
音楽を取り巻くエンタテインメント業界は、社会生活と密接に関係しています。コロナ禍では「不要不急」の槍玉に挙げられましたが、エンタテインメントは社会と切り離して語れるものではなく、むしろ現代社会の映し鏡の一面もあると考えています。
また、ニュースを介して社会に関心をもち、つながりを感じることは、孤立感を解消させるという意味で、精神衛生上にも良い効果をもたらすものと考えています。そうした意味を込めて、ニュースの動向を探っていこうと思っています。
富澤えいちは17ライブ(https://jp.17.live/ja)でジャズに関する配信をしています。お気軽にお立ち寄りください(id:えいち_jazzを検索してね)。エールをポチッと(無料です)してもらえると嬉しいです。。。
4/1配信の進行台本を公開しています。
https://bit.ly/3wQzwIl
記事単体は100円ですが、月単位のマガジン390円でその月に追加される記事を読むことができます。

日本の音楽産業が新たなフェーズに入ったそうです
この記事によると、シュリンクしたままと思われていた日本の音楽産業が、「ストリーミング形式」に牽引されるかたちで、V字とはいかないまでも、回復基調を示す数字が上がっているようです。
音楽ソフトの総生産が2000億兆円規模で、そのうち音楽配信が900億円。売上の水準が2009年ごろの規模を回復したということです。
サブスクリプションの波及によって収益の希薄化が予想されていただけに、これは意外。
配信のなかでもストリーミング形式が700億円を占め、前年比126%の成長率とか。
「楽曲単品・アルバム単位でのダウンロード販売の売り上げが下がり続けている」のは想定どおりですが、これを補っているのがストリーミング形式だというわけです。
ザックリと言ってしまえば、リスナーは曲(音楽)を(ピンポイントで)買うのではなく、音楽を生活と組み合わせたライフスタイルとして考え、そのための投資をしているというか、もっと直裁に言えば「音楽というタイムラインを買っている」ということになるのかな、と。
そこで気になったのが、この記事。
ここでは「音楽の値段」というテーマで近年の音楽産業の収益構造についてまとめているのですが、ストリーミング・サービスの収益率の高さに言及しているんですね。
要するに「儲けすぎ」だと。
これらを合わせてみると、音楽産業の回復事情も腹落ちしてくるわけですが、だとするとプラットフォーマーでなければ将来はかなり厳しいことになる。
インディペンデンスがどう生き残るのがを含めて、考えさせるというか、考えなければならないことの基礎にある気付きを与えてくれる記事だったと思います。

「野村佐紀子にモートン・フェルドマン|菊地成孔の写真選曲集1」はこう読め!
野村佐紀子にモートン・フェルドマン|菊地成孔の写真選曲集1
ニュースをチェックしていたらおもしろそうな記事を発見。
菊地成孔さんが写真と音楽をマリアージュさせようという企画。
しかし、いろいろな事情があるようで、記事には音楽が付いていない。ま、仕方ないけど。
で、勝手に付けて鑑賞できるようにアレンジしてみた。
モートン・フェルドマン「コプトの光」
まず、こちらをYouTubeで再生。
野村佐紀子にモートン・フェルドマン|菊地成孔の写真選曲集1
そして、それを聴きながら、この記事を読む。
写真をクリックすると、拡大できるようになるので、ジックリと鑑賞。
これでやっと、野村佐紀子さんの『春の運命』を味わう準備が整い、菊地成孔さんが語ってくれている文章を音楽に溶かし込みながら、写真の世界へと没入するのだ。
ステイホームの美術鑑賞として、おもしろい“遊び”を教えてもらった。
モートン・フェルドマン「コプトの光」
モートン・フェルドマン:コプトの光/弦楽四重奏と管弦楽 アルバム C-5378
野村佐紀子の作品集
