「WIRED」誌に掲載されたブルーノート・レーベル社長のドン・ウォズ氏のインタビューがおもしろい。
鋭くレコード業界の現状を分析し、ヴィジョンを語っている。
Web版の「WIRED」誌の記事はこちらから…
「クソみたいなレコードをつくらないこと」:ブルーノートの社長による音楽プロデューサー論 « WIRED.jp
1980年代にファンクバンドWas(Not WAS)で一世を風靡したベーシストは、以後ボブ・ディラン、ザ・ローリング・ストーンズなどの作品を手がける大物プロデューサーとして名を馳せてきた。押しも押されもせぬ業界の重鎮は現在、名門「ブルーノート」の社長を務める。ハリウッドの名所キャピタルタワーの執務室で話を訊いた……。本誌『WIRED』VOL.8 特集「これからの音楽」より転載。 …
ミュージシャンでプロデューサーだったウォズ氏自身がレコード会社に対してはいいイメージを抱いていなかったと語るところからインタビューは始まっている。
続いて、1990年代には営業が、2000年以降は金融屋が、という言い方で、要するに現場の意志を無視したかたちでレーベルが運営されたことが現在のシュリンクの大きな要因であると指摘している。これについては異論がないだろう。
音楽ってのは、そもそもがギャンブルなんだ。「結果はわからないけど、面白いからやってみよう」。そうやって音楽は領域を拡大し、進化を遂げてきた。レコードマンっていうのは、自分の本能と愛情と献身と責任において新しい音楽を生み出してきたわけで、いま音楽業界はそういう人たちの手にもう一度戻ってきているんだと思う。
老舗レーベルのトップにいる人が「戻ってきている」と語ってくれるのは、ファンの1人としても心強い。
音楽で大儲けできる時代は終わったのかもしれないとは思う。そこで生き残っていくためには経営をヘルシーにして、無駄なお金を使わないようにしなきゃいけない。昔のレコード会社ときたら、受付にコカイン入りのボウルがあったものだけど、もうそういう時代じゃない(笑)。それと、クソみたいなレコードをつくらないこと。これが何よりの「健全化」だね。スマートなビジネスをして、それなりの暮らしを送れるならそれで十分だよ。そう思えれば、音楽の仕事は、これからもワンダフルだよ。
彼はコカインを「クソみたいなレコード」に例えている。これはわかりづらく、でも興味深い。おそらくその常習性や良識を麻痺させていく麻薬の性質を知る立場だからこそ、できた比喩なのではないだろうか。
ブルーノートは、創設者であるアルフレッド・ライオンが最初に掲げた「オーセンティックな音楽を世に送り出すこと」というミッションに立ち戻って活動を続けるという。
楽しみにしたい。