国立国会図書館の34万冊以上の著作権切れの本のデジタル化を行なっているのが、近デジこと近代デジタルライブラリー。
最近、この近デジが日本出版者協議会の要望を受けて公開停止にした本があり、ネットで炎上していた。
それが…
大蔵出版発行の『大正新脩大蔵経』全88巻。
この経緯について、記事では、版元の社長から話を聞いている。
図書館デジタル化の波紋、パブリックアクセスと出版は両立するか | カーリルのブログ
『大正新脩大蔵経』の現物はずっと売られ続けているし、ワンセット149万円(税抜)もする資料です。本書は1960年~1979年の19年もかけて復刻したもの。昔の本の写真を1枚1枚撮って、本当に手間をかけている。1977年に遺族から著作権も買い取った。遺族との絆もある。そういう意味では、その50年後の2027年までは大蔵出版の著作権保護期間であると考えることもできます。 …
社長によると、一般的な著作権切れの本全体に対して意義を申し立てているのではなく、該当本は遺族から著作権を買い取り、継続して販売している「切れていない商品」であると主張。
つまり、青空文庫とは違う昔の本もあるのだということを世に訴えているということだ。
次に、彩流社から発売された『エロエロ草紙【完全復刻版】』を取り上げている。
この本は、近デジの閲覧数ランキング1位という人気を誇り、これに目をつけた版元の担当者がデジタルから紙での発行を企画し実現したというもの。
原本は古書店を回って探しても手に入らず、ダメもとで国立国会図書館に掛け合うと、「貴重書なので複写許可できない」と予想通りの回答が。
粘ってようやく、デジタルデータではなく、特別に原本の複写を許可するという、意外な結果になった。
『エロエロ草紙』の近デジ所蔵のデジタル版はモノクロだが、原本はカラー。彩流社はこれに修復などを施して付加価値をつけた。
担当者は「コピーライトを付けさせてほしい」と語るほどの自信作だが、その点はクリアされなかったそうだ。
この記事では、2つの話題を通して、図書館の在り方と、出版との関係を考える機会としたいと結んでいる。
デジタル化が万能ではなかったことは、すでに多くの人が気づいていることだが、一方で図書館というアナログ知の集合場所であり膨大な文化遺産が見捨てられたまま朽ちて行く状況は深刻化している。
自炊、ネットワーク化、オンデマンド印刷など、利用可能で効果的な手段もすでに個人レベルにまで浸透している現在、垣根を超えて本が朽ちるままの状況から救い出し、アナログ知を活用できるようにな流未来が切り拓けるのではないかと、この記事を読み終えて考えさせられた。